用語解説


α(最大応力係数)、β(最大たわみ係数)

最大曲げ応力、最大たわみを求めるときの係数です。長辺と短辺の辺比(長辺/短辺)から求めます。

本プログラムでは下の表をもとに、区間内は比例計算して求めています。

四辺固定等分布荷重の場合
長辺/短辺 1.01.11.21.31.41.5
α 0.3080.3480.3830.4120.4360.454
β 0.01380.01640.01880.02090.02260.0240

長辺/短辺 1.61.71.81.92.0
α 0.4680.4790.4870.4930.4970.5
β 0.02510.02600.02680.02720.02770.0284

なお、面の形態によっては、四辺固定以外にも、四辺支持、二辺固定、二辺支持等の計算に用いる係数があり、面の形状が円板のときは、円周固定、円周支持という異なった係数があります。

角槽の場合は、隣り合った板材と溶接接合されることと、安全率を十分にみること、また鉄製アングルによる補強材は「支持」という形態ですが、槽の各辺全てを含め十分な強度で支持するということから、「四辺固定」で計算します。

当然、塩ビ製アングルや塩ビ製フラットバーの補強であれば溶接固定するので、「四辺固定」が理屈となります。

より安全をみたい場合は、「四辺支持」の各係数を用いることになります。
この係数表は本サービスにはありません。



安全率

安全率(総合安全率)は以下の要因を加味した数式で計算されます。

総合安全率 = クリープ係数×溶接効率×安全係数

・クリープ係数
塩化ビニル樹脂(ポリ塩化ビニル)、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂は、長期間の荷重負荷があるとその応力にみあった歪み(変形量)が永久歪みとして残ってしまいます。
これは一種の「へたり」ですが、この現象を「クリープ現象」と言います。
へたりが続くと最終的には板厚も薄くなり破壊してしまうことになるので、この現象を軽減するため、通常40℃未満では1/2(2倍の安全)、40℃以上では1/2.5(2.5倍の安全)の値を係数として使用します。

・溶接効率
溶接のような不連続な部分のないプレートそのものの強度に対し、溶接部分の接合強度の割合を「溶接効率」と言います。
実際に同時測定で引張試験を行うと、熟練された方の溶接効率は、70%から90%以上になることがありますが、多少強度が振れても全ての状態を含むという意味で通常は50%から60%として計算に用います。(設計上材料の強度は、最も低い部分の強度とみなすということです。)
本計算プログラムでは1/2(50%)を採用しています。

・安全係数
機械類等一般的な構造物における「安全率」に当たるものです。
静的条件下では1/2(2倍)、通常設定で1/3(3倍)、動的条件下では1/4(4倍)を使用します。

これらにより、硬質塩化ビニルやポリプロピレン等のプラスチックタンクの場合、総合安全率を1/10から1/15前後としていただきたいものとなります。



応力規制

必要板厚などを求めるときの応力的な規制条件です。

規制値は、その材料の許容応力値とし、最大発生応力がその許容応力より小さくなるとして計算式を設定し、解を求めます。

許容応力値は物性値から算出するので使用温度によって変化する値で、場合によって許容引張応力と許容曲げ応力の2種類を使い分けます。
角槽のように平面板が曲げの方向にたわむ場合、許容曲げ応力値を応力規制に用い、円筒槽の側板のように全体が伸びる方向の変形となるものは、許容引張応力値を用います。



許容曲げ応力、許容引張応力

短期引張強さ総合安全率をもとに以下の式を用いて設定します。

許容引張応力 = 短期引張強さ × 総合安全率

許容曲げ応力 = 許容引張応力 × 1.5 ( = 短期引張強さ × 総合安全率 × 1.5 )

ヒシプレートの物性値として示すことのある曲げ試験は破壊試験ではなかったため、経験的に許容曲げ応力は許容引張応力の1.5倍として計算しています。



たわみ規制

この規制値には正式な根拠がありませんが、一般的に目視で変形が認められはじめる大きさとして経験的な数値を用います。

計算上の(発生し得る)最大たわみ量がこの数値未満となるような理論式を設定し、解を求めます。

角槽(角タンク)の側板としては、短辺や支持間隔の長さをaとすると、通常(a/130)を使用します。
補強材の場合は、板を押さえる意味から板より変形が小さくなければならず、その長さをaとすると通常(a/200)を使用します。

この規制値は必要(要求品質)に合わせ変更してもよい値ですが、目に見えての変形は、その変形を起こしている大きな負荷(応力)が存在しているわけであり、変形の支点となる接合部にその応力が集中しやすいことを考慮しなければなりません。
場合によっては亀裂が入り、破損に至ることもあります。



短期引張強さ

ダンベル状の試験片を引張試験機で引き延ばして破壊したときの最大強度を用います。

プラスチック類は、引張の試験速度が速いほど破壊強度が高くなりますが、通常の引張試験の範囲での数値変化は振れの程度と考えることができます。
よってこの試験速度による数値の違いと実使用における水圧等の応力がかかる速度の範囲は、本設計計算においては、安全率でカバーしてしまおうとの考え方をしています。

重要なことですが、衝撃はこの速度の考え方と比較して、かなり大きな負荷速度となりますので、衝撃に対して本計算は適用できません。
通常衝撃のあるような使い方は、プラスチック製のタンク・槽類では破損の危険性が高く定常状態の計算とならないため適用できません。

また、プラスチック類の物性値は温度により変化しますので、使用温度を十分に考慮しなければなりません。
温度が高いほど強度は下がりますので、タンク・槽の最高使用温度における強度より許容応力を求めなければなりません。
(使用可能な温度範囲があることを忘れないでください。)

ヒシプレート各品種の温度ごとの短期引張強さは、以下の数式(線形近似式)で求められます。

設計温度(最高使用温度)T℃における短期引張強さ=
  常温(23℃)の短期引張強さ−製品毎の係数×(T−23)

T℃における短期引張強さ(MPa)
製 品 製 法 特 性 短期引張強さ計算式 連続使用
可能温度
HP-101 プレス 一般工業用 50.0 - 0.65 (T-23) 0〜60℃
HP-101E 押 出 一般工業用 49.0 - 0.65 (T-23) 0〜60℃
HP-101HT プレス 一般工業用耐熱 55.0 - 0.49 (T-23) 0〜85℃
HP-101CL プレス 一般工業用 50.0 - 0.65 (T-23) 0〜60℃
HP-103PX プレス 一般工業用高衝撃 41.0 - 0.49 (T-23) -10〜60℃
HP-PP プレス 一般工業用
ポリプロピレン
30.0 - 0.425 (T-23) 0〜90℃
HP-NT NT230
(NT200系)
連続プレス ニューテック
一般工業用不透明
54.0 - 0.65 (T-23) 0〜60℃
HP-NT NT300
(NT300系)
連続プレス ニューテック
一般工業用透明
66.0 - 0.88 (T-23) 0〜50℃
HP-NT NT2610
(NT2000系)
連続プレス ニューテック
一般工業用高衝撃
(41.0) - (0.49) (T-23) -10〜60℃


補強材の間隔

補強材(アングルなど)の配置は槽(タンク)の強度に大きく影響するので、適切な間隔でバランスよく配置する必要があります。

板厚を求める計算式には板厚(t cm)と補強間隔(=支持間隔、四角面での短辺長さ a cm)を含んでいますので、希望する板厚を決めてしまえば、aを求める式に変形してtを入力することによりおおよその支持間隔aは求めることができます。
例えば、横通し補強として、最大応力・たわみ係数は最大値を仮に適用し、板厚も決めて代入することにより、支持間隔aはおおよその目安として求められます。
仕様決定後、強度確認は必要となります。

しかし、本プログラムでは計算速度が速いためこのような求め方はせず、補強材の配置を試行錯誤で入力して都度計算結果を確認しながら設計することができるようにしています。



補強材幅による補正

角槽(角タンク)本体の板厚計算は、周囲が固定(または支持)されている面の、板のみで負荷を受けている部分のサイズの計算となります。
(言い換えれば、板と補強材は別々に計算するため、補強材と重なっている板部分を除いた板のサイズで計算して差しつかえないということです。)
よって、補強材のある部分は補強材として扱うことができ、その内側の板厚計算をすればよいことになります。
すなわち補強材の幅だけ負荷を受けている面積が小さくなるため、強度的には有利となります。

槽(タンク)の使用条件があまり過酷でなければ、補強材幅を考慮した再計算を実施してみるのもよいでしょう。
更に薄い板厚でOKとなる可能性があります。



ヒシプレートの製造方法

ポリ塩化ビニルやポリプロピレン製プレートの製造方法には、一般的に押出製法とカレンダー・プレス製法とがあります。

カレンダー・プレス製法

カレンダーと言われているロール設備で加熱・混練され作られたシートを、製品の厚さ分だけ枚数を重ねて金属化粧板に挟み込み、プレス機で加熱・加圧し熱融着させて生産する方法でしたが、ヒシプレートでは、カレンダーシートの代わりに押出シートを用いたものも製品化しています。

一定サイズの熱板を持つプレス機でプレスするためサイズの規制はありますが、厚さは設備のサイズと能力(加熱・加圧)が許す限り(押出で作り難い)厚いものが成形可能です。

さらに平面で加圧していますので、縦横の歪み差が小さく、縦横の歪みの方向も同じであることが扱い易さの基となっており、広い面積をきれいな金属化粧板で押さえることができるため、外観が良いことが利点として挙げられます。

ただし挟んで押すだけの機構ですので、厚さの精度が出しにくいことと、シートを作り、それを重ねてまたプレスするというバッチ処理のため、手間がかかることが欠点といえます。

なおヒシプレートでは、カレンダー加工のシートの代わりに、押出シートをプレス用のシートとしているプレス製法の製品もあります。

押出製法

押出機で加熱・混練された樹脂をロールで引き取って連続的に生産する方法です。

熱可塑性樹脂のフィルムやシート、プレート(板)の多くは、この方法で作られています。

連続生産できるので、設備の許す限り長いものができるということと経済的であること、また幅方向に厚さの調整がしやすくなっていますので厚さの精度が比較的そろえやすいことが利点として挙げられますが、一方向に引っ張っているので縦と横で異なる歪みを持っていることと、ロールに接触させて(いわゆる短い距離で)表面状態を形成しているため、一般的には外観があまりよくない欠点があります。

連続プレス製法

硬質塩化ビニル板(PVCプレート)では、もう一つ弊社が業界に先がけて採用した連続プレス法があります。

この製造装置はプレートの原形を作り出す混練機と、その原形を連続的にプレスして行く連続プレス機構が合体しており、プレスと押出の欠点を軽減し、両方の利点を取り込むことができます。

連続的に生産できるため、コスト的にも異物の混入のし難さにおいても有利となっています。



フラットバーの設計

断面係数 Zと断面二次モーメント Iのそれぞれから必要なフラットバーの断面形状を計算することができます。

(断面係数=フラットバーの板厚×(フラットバーのつば高さ)2乗/6より)

フラットバーのつば高さ = √(6 × 断面係数 / フラットバーの板厚)

(断面二次モーメント=フラットバーの板厚×(フラットバーのつば高さ)3乗/12より)

フラットバーのつば高さ=3乗√(12×断面二次モーメント/フラットバーの板厚)

これらの式は、変形において動かない(中立な)中立軸が“つば高さ”の中央となる長方形断面を持つ梁(はり)の考え方です。



品種の選択

樹脂材料は使用温度、使用目的などにより使い分ける必要があります。

また、製造方法によって板厚や寸法に制約が生じます。

ヒシプレート規格表



補強材の選択

補強材は補強効果の最も高い金属材料(鉄製アングル)が基本となりますが、薬液に対する耐蝕性が必要なときは塩化ビニル製アングルを用います。ただし、金属ほどの剛性が得られないため、選択できるものがないときフラットバーとしたり、時には鉄製アングルで補強を行い、塩ビ樹脂材で覆ってしまう例もあります。(異種材料の組み合わせでは、温度変化に対する材料の伸縮差に注意が必要となります)



許容曲げ応力からの必要板厚

平板の最大曲げ応力は次の数式から計算できます。

最大曲げ応力 σb max = σ Pa2乗/t2乗 (kgf/cm2)

これより、必要板厚は次の数式で計算できます。
(応力規制:最大曲げ応力σb max<σb allow(許容曲げ応力)として
 式をtで変形する)

t >√α・P・a2乗/σb allow (cm)


: 分布荷重(圧力) (MPa)
: 支持間隔または短辺の長さ (mm)
: 板厚 (mm)
α : 最大応力係数
補強材の応力による計算は、別に梁(はり)の計算式にて行います。


たわみ規制からの必要板厚

平板の最大たわみは次の数式から計算できます。

最大たわみ δmax = β Pa4乗/Et3乗 (cm)

これより、必要板厚は次の数式で計算できます。
(たわみ規制:最大たわみ δmax<たわみ規制量a/130として
 式をtで変形する)

t >3乗√130・β・P・a3乗/E (cm)


: 分布荷重(圧力) (MPa)
: 支持間隔または短辺の長さ (mm)
: 板厚 (mm)
: 設計曲げ弾性係数 (MPa)
β : 最大たわみ係数
補強材のたわみによる計算は、別に梁(はり)の計算式にて行います。


弾性係数

塩ビの弾性係数は温度や負荷速度の影響を受けやすいため、許容曲げ応力算出時の短期引張強さと同様、温度に対しては各温度の弾性係数を用い、負荷速度に対しては安全率(補正値)でカバーします。

設計計算用の弾性係数は各温度の弾性係数に精度限界を考慮した補正係数を乗じたものを使用します。

設計弾性係数=各温度の弾性係数 × 精度限界補正値(0.85)

本プログラムでは下の表を元に、区間内は比例計算して求めています。


ヒシプレートの設計弾性係数
(単位 : MPa)
温度 101,101CL,NT230 101E 101HT
引張曲げ 引張曲げ 引張曲げ
0℃ 26702750 25002580 25802750
20℃ 24502580 22502420 24202580
40℃ 21702250 20002170 21702250
60℃ 16701770 16701770 19202000
80℃ 14701570

温度 NT300 103PX PP
引張曲げ 引張曲げ 引張曲げ
0℃ 29403140 21702160 23502260
20℃ 26502940 19401950 17701470
40℃ 23502560 17301750 1280980
60℃ 14501580 790590
80℃ 490390


分布荷重(等分布荷重)

槽(タンク)にかかる負荷とは水圧(液圧)ですが、側板の板厚を計算(強度計算)するときにこの水圧に耐える板厚を算出することになります。この水圧が計算に用いる「分布荷重」ということになるのですが、実際の水圧は槽(タンク)の底へ行くほど高くなる「等変化荷重」にて側面に圧力を与えています。
しかし等変化する水圧では計算が煩雑になるということと、より安全側にみるということから、本計算では、底部の最大圧力を等分布荷重として用いています(平面に均等にかかっている圧力ということです)。

耐蝕材料等の文献を見ると、等変化する荷重の平均的な値として、底部から1/3の高さの部分の圧力を平均圧力と考え、「等分布荷重」としているものもありますが、本計算は安全側に考えています。



補強材の寸法と断面数値(等辺山形鋼)

等辺山形鋼
標準断面寸法(mm) 断面二次
モーメント
(cm4)
断面係数(cm3)
呼称 A × B
3 × 2525 × 2530.7970.448
3 × 3030 × 3031.420.661
3 × 4040 × 4033.531.21
5 × 4040 × 4055.421.91
4 × 4545 × 4546.502.00
5 × 4545 × 4557.912.46
4 × 5050 × 5049.062.49
5 × 5050 × 50511.13.08
6 × 5050 × 50612.63.55
4 × 6060 × 60416.03.66
5 × 6060 × 60519.64.52
5 × 6565 × 65525.35.35
6 × 6565 × 65629.46.26
8 × 6565 × 65836.87.96
6 × 7070 × 70637.17.33
6 × 7575 × 75646.18.47
9 × 7575 × 75964.412.1
12 × 7575 × 751281.915.7
6 × 8080 × 80656.49.70
6 × 9090 × 90680.712.3
7 × 9090 × 90793.014.2
10 × 9090 × 901012519.5
13 × 9090 × 901315624.8
7×100100×100712917.7
10×100100×1001017524.4
13×100100×1001322031.1
8×120120×120825829.5
9×130130×130936638.7
12×130130×1301246749.9
15×130130×1301556861.5
12×150150×1501274068.1
15×150150×1501588882.6
19×150150×150191090103
12×175175×17512117091.8
15×175175×175151440114
15×200200×200152180150
20×200200×200202820197
25×200200×200253420242
25×250250×250256950388
35×250250×250359110519


補強材の寸法と断面数値(塩化ビニル樹脂製アングル)

ヒシアングル
標準断面寸法(mm) 断面二次
モーメント
(cm4)
断面係数(cm3)
呼称 A × B
4 × 3030 × 3041.850.88
5 × 4040 × 4055.421.91
6 × 5050 × 50612.63.55
7 × 6060 × 60725.96.06
9 × 7575 × 75964.412.1

ヒシアングルスーパー(耐衝撃グレード)
標準断面寸法(mm) 断面二次
モーメント
(cm4)
断面係数(cm3)
呼称 A × B
5 × 4040 × 4055.421.91
6 × 5050 × 50612.63.55
7 × 6060 × 60725.96.06